目次
開催案内
表⽪構造の数理モデルとその応⽤
日時
令和4年12⽉7⽇(⽔)午後4時45分より
場所
京都⼤学⾼等研究院本館 2階セミナールーム(207号室)
(地図 https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/yoshida/map6r-y の77番の建物)
*Zoomによるオンライン参加も可能です.希望される方は
12⽉7⽇正午までに世話⼈(suzuki.ryo.8z@kyoto-u.ac.jp)までお申し込み下さい.
講演者
長山 雅晴 教授(北海道大学電子科学研究所)
題目
表⽪構造の数理モデルとその応⽤
概要
皮膚は生命に内外を分ける境界としてだけでなく、外界からの情報を体内に伝える働きや外界から体内への異物の侵入を防ぐ働き、体内の水分を外界に漏らさない働き(保水機能)をしている。このような働きは皮膚の最も外層にある表皮が重要な役割を担っており、角層バリア機能と呼ばれている。
この研究では、表皮構造を再現する数理モデルの構築を行い、角層バリア機能の恒常性維持について考察した。その結果、基底層からの細胞供給量に依存すること、および真皮が硬くなることによって表皮が薄くなり、角層バリア機能が低下することを示した。さらに、増殖亢進と急速なターンオーバーを仮定すると「魚の目」として知られる病態が再現できることがわかった。また、ヒトの「魚の目」病理検体データを解析した結果、数理モデル上の仮定を示唆していることもわかった。
この講演では、表皮構造モデルの構築、その病態再現への挑戦、そして数理モデルの器官形成モデルへの拡張について説明する。
世話人
Karel Svadlenka (karel@math.kyoto-u.ac.jp)
鈴木 量 (suzuki.ryo.8z@kyoto-u.ac.jp)
山本 暁久 (yamamoto.akihisa.6w@kyoto-u.ac.jp)
開催報告
講演者の長山先生
会場の様子
質疑応答
講演後の議論
令和4年12月7日に京都大学高等研究院本館においてハイブリッド形式で開催されたMACS SG7 /医数物連携勉強会の合同セミナーでは,北海道大学電子科学研究所の長山雅晴教授に「表皮構造の数理モデルとその応用」について講演していただきました.
SG7では病理画像に基づくガン診断の定量化を目標としていますが,この取り組みの一環として上皮内ガンの数理モデルを構築して定量化指標の正しさを裏付けることも考えています.しかし,重層構造をもち,ターンオーバーにより動的平衡状態が保たれるような組織のモデリングが難しく苦戦していました.そこで,勉強させていただくつもりで,表皮構造の数理モデリングに精通している長山先生に講演を依頼しました.
講演ではまず,生命の内外を分ける境界である皮膚のもつ重要な役割として,外界からの情報を体内に伝える働きや外界から体内への異物の侵入を防ぐ働き,体内の水分を外界に漏らさない働きなどについてご概説いただきました.そのあと,表皮構造を再現する数理モデルの構築を行い,角層バリア機能の恒常性維持について考察した経緯と結果についてご紹介いただきました.この恒常性は基底層からの細胞供給量に依存することや,真皮が硬くなることによって表皮が薄くなり,角層バリア機能が低下することを数理モデルを通して示されました.さらに,「魚の目」などの病態再現への挑戦,そして数理モデルの器官形成モデルへの拡張について説明がありました.
講演後に対面参加者10名とオンライン5名から多くの質問があり,議論が盛り上がりました.セミナーの第二部では,残った参加者で長山先生を囲んでこの議論の続きを行いました.皮膚の数理モデルのより詳細な部分や技術的な面について話し,上皮内ガンのモデリングへの適用の可能性について検討しました.これからぜひ共同でこの研究を続けていきたいという意気込みで充実した会が終了しました.